【2024年新年のご挨拶】AERA dot.今年の注力分野
編集長の鎌田倫子より、新年のあいさつと今年の注力分野についてお伝えします。 AERAdot.のニュースサイトとしての注力分野 「新しい女性リーダーを一緒に作る」 AERA dot. は、社会への感度と常識を底上げするメディアです。このニュース媒体としての使命を果たすことは大前提として、これから特にどの分野に注力してくのか。社会課題の一つとして、組織や社会のコミュニティーで核となる女性、つまり女性のリーダーの少なさに注目しました。メディアの活動を通して、働く女性とともに、新しい時代のリーダー像をつくっていく。そこに注力していく考えです。 ■なぜ今さら?女性リーダーはバージョンアップの時期に来ている 朝日新聞出版は、ニュース週刊誌「AERA」を中心にかねて女性の視点を取り入れた誌面作りを行ってきました。そのAERAで初めての女性編集長が就任したのが2014年。それから10年余りが経過しました。当時から女性の社会的地位向上が一つのテーマでしたが、掲げた女性像はそろそろバージョンアップすべきタイミングに来ています。 では、どのような女性像を掲げるべきなのか。働き方や会社組織の在り方も多様化し、ロールモデルがいない時代です。実は過渡期にある社会でもそれはよく見えていません。ならば、新しい女性リーダー像を一緒につくる、そんなスタンスで、女性が共感できる課題や悩みをすくい上げてあるべきリーダーの姿を模索しならが、発信していけばいいのではないか。それこそがAERA dot.の使命の一つと考えます。 ■日本社会は女性リーダーの不在に悩んでいる そもそもなぜ「女性」に限定するのか。それを説明します。 「Sustainable Development Goals( SDGs)」、「持続可能な開発目標」と呼ぶ、国際社会共通の目標は17個ありますが、日本において最重要な課題が残っているとされるテーマの一つは「ジェンダー平等」です。日本のジェンダーギャップ指数は先進国の最低ランク。特に、経済、政治の分野で遅れています。これは日本社会において女性の「リーダー」的存在の不在を意味しており、企業も他人事ではいられません。 この10年の間に女性の管理職登用は増えました。しかし、重要な意思決定に携わる地位、つまり経営層となると、女性はまだごく少数です。中小企業である弊社を例にとると、管理職の女性の割合は50%を超えていますが、経営会議のメンバーは女性ゼロ。日本の組織はどこも似たり寄ったりの状況ではないでしょうか。 ■「ガラスの天井」ではなく「壊れた横木」 女性活躍の障壁を昔は「ガラスの天井」と呼びましたが、今はそれは少し間違った認識とされています。最後に天井があるのではなく、キャリアのスタート時から大小さまざまな障害がある、キャリアの階段を上るときに梯子のところどころ壊れているため、足を踏み外し、うまく登れない、「壊れた横木」が正確な認識だとされています。 例えば、妊娠・出産に伴う制度は整ったものの、日々の生活で家庭のことを多く背負うのは女性で、またパートナーの海外転勤などでキャリアを中断したり、諦めたりするケースは多く残っています。さらには、社会に出る前からバイアスがかけられており、男性より女性は自分の能力を過小評価する傾向があるという研究結果もあり、女性自身が積極的になれず、それも一定上の地位に女性が少ない要因の一つといわれています。 ■「私の選択は正しかったのか」後輩たちに示せるもの 上記のことは私自身の経験からも言えることでしょう。編集長という立場から「上り詰めたね」と言われることがありますが、それは二つの意味で正しくはありません。 「ガラスの天井」にぶち当たったハイキャリア女性たちのように野心があったかというと、そうではなく、今よりいい仕事がしたい、成長したいと思い続けてチャンスがあっただけにすぎません。そして壊れた横木は私にも存在しました。キャリアを形成する過程で、妊娠・出産・育児・介護など環境変化のタイミングで戦線離脱する先輩、同僚、友人が身近にたくさんいました。それを見て私は無意識に先送りしたり、意識的に選択しなかったり。つまり結果として「身軽」だったから、壊れた横木でも登れてきたのです。 私の選択は正しかったのでしょうか。少なくとも後輩たちのロールモデルにはならないだろうと自覚しています。だからこそ、次世代を担う女性たちとともに、人生と仕事をみつめなおし、今のキャリアの先を誰もがチャレンジできる体制を作っていきたいと考えています。 ■キーワードは「理想」や「憧れ」ではなく「共感」 職場、政治、社会のコミュニティーにおいて核となる女性はいったいどんな人なのか。バリキャリでしょうか、ゆるキャリでしょうか、ワーママでしょうか。いずれも、サイズの合わない服を着たときのようにいまの時代の女性の心にフィットしないと思います。理想像を掲げるのではなく、必要以上に卑下するのでもなく、当事者の声に耳を傾け、励まし、ともに解決する「共感」の姿勢を重視します。 リーダーは突然現れません。声をすくいあげ、情報発信を繰り返していくことが重要であり、webメディアとしてAERAdot.はその役割を担います。 (2024年1月7日 AERA dot. 編集長 鎌田倫子)